美山の風景 2014夏



文:青田真樹

トミエさんのお米

美山町田歌(とうた)。山美しく、田が歌う。里地里山の風景が残る美しい地区である。田歌地区は清流美山川の上流域にある人口70名・20戸の集落。この地区は未だに耕作放棄地がない。地区の人がなんとか共同して田畑を維持させ地域の風景を守っているためだ。そして、田歌地区でもとりわけ美味しいお米の作り手が高野トミエさん(80)。

「みんなから、“トミエさんところは、よーけお米できるなぁ”と言われてますんや」とトミエさん。美味しいだけでなく収量も一番多いそうだ。一般的には、コシヒカリの方がキヌヒカリより収量が多いと言われ、田歌の人達が作っているのもコシヒカリだ。しかしトミエさんだけはキヌヒカリ。なぜ、キヌヒカリを作っていながら収量は一番多いのだろうか…。

トミエさんさんの米づくり歴は50数年。旦那さんの体が弱かったこともあり、嫁いでからずっと平日は働きに出て、帰宅後や休日に米づくりをする暮らしを続けてきた。そのため、コシヒカリよりも(背が低く)倒れにくく栽培しやすい品種として、味も遜色のないキヌヒカリを選んだという。

トミエさんは昔からずっと、飼っていた牛の糞や、(今は近所から牛糞は購入している)山に行って刈った芝、草刈りして集めた雑草で田んぼの土をつくってきた。集めた雑草を、稲刈り後の田んぼ一面に隙間なく敷き詰め、秋鋤(あきすき:稲刈りの後に田起こし)の際に田んぼに返して、草をすき込むというわけだ。
とはいえ、この方法を今も続けているのはトミエさんだけ。何しろ、良い土をつくるための作業はとてつもなく地味で大変だ。田んぼにあきぢなく(隙間なく)草を引き詰めようと思うと相当量の草が必要であり、草刈りのたびに、畝や斜面から草を集め、田んぼの一角に積み上げるわけで、相当骨が折れるのだ。それでも50数年続けてきたこのやり方をトミエさんは今も変えない。結果、通常1反あたり30kgほど使う化学肥料が、10kg程度で済むという。

「子や孫は“白いご飯をそのままたべるのが一番!おばぁのコメたべたら他のコメたべられなくなる”なんて言うんや。ヒヒヒ…」恥ずかしそうに笑うトミエさん。地味で手間のかかる土づくりが、トミエさんのお米を生みだしている。

※ トミエさんの米をお分けします。(キヌヒカリ:玄米)5kg 2,650円 30kg 16,000円(送料別)。
トミエさんの作るお米は、古米になってもあまり味が落ちません。新米の前に、一度味を比べてみてください。


今年も帰ってきた鮎

夏の美山を語る上で欠かせないものは、鮎。味・香り・形の良しあしが競われる「清流めぐり利き鮎会」で準グランプリに輝くほどの品質を誇る。この鮎を育むのは、芦生原生林より流れ出した清流、美山川だ。それでも、美山川を愛する野人の大野は今の美山川をこう評する。

「かつては、嫌になるほどうなぎや雑魚(じゃこ)がとれた。それが今ではおらん。じゃこがおらん川は川じゃない。」

美山の暮らしは、ずっと川とともにあった。美山町内の小学校にはプールはなく、夏になると川のあちこちで「水泳場」の看板が立つ。夏休みは大人が川当番。「水泳場」に釣り人が入ることは禁じられ、川ガキたちの楽園と化す。大人たちも仕事の合間や夕暮れ時には、川へ行きじゃこ釣りに励んだ。ダンギリボ(カマツカ)やミコシンダイ(オヤニラミ)を釣っては晩のおかずや酒の肴にしていた。夜にはうなぎカゴを仕掛けにいくこともまた、日常だったという。また川水は、栃の実のあくぬきや皮むきのためにも使ってきた。鹿を捕っては血抜きもしてきた。けれども鮎が有名になる中で、鮎釣り漁師が増え、夜釣りも禁止になった。水量・水質の悪化、川に棲む生き物の減少が足を運ぶ人も少なくさせてきた。

「美山川はもう終わりかもしらん。けど、やっぱり昔みたいな釣りがしたい。僕が若い頃釣れた鮎やうなぎ、それにじゃこたちをめいっぱい釣りたい。そんな美山川にもう一度したいんや。」と野人の大野はつぶやく。

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