野性で料理する



特集:移住 聞き手=牧 大介 語り手=藤原 誉

料理人はいまどんな素材を欲しているのか。野人・藤原さんと《リストランテ245祇園》にお邪魔して、以前より田歌舎の獣肉を使って下さっている吉岡シェフに、美山で捕れた鹿や鴨、舞茸を使ったお料理を作って頂きながら、料理人と猟師の関係について話し合いました。野人が山や川でおいしいものをとって、それを都会に提供する。需要が生まれることで、また野人が増える。そんな循環を実現するために必要なこととは。

藤原:都会のこんな洒落た店なんて、オレらとは別世界やなんて思っているかも知らんけど、実は食の最先端には全国の野人がとった食材があるわけやね。吉岡君は以前彼が料理雑誌に載った時に、うちの食材をいくつか使ってくれて。ハクビシンとかアライグマとか珍獣ばっかりやったけど(笑)。まあ、前の店からのお付き合いで、以前から鹿肉はつかってくれとった。それ以来の長い付き合いなんや。その中で、どうもシェフたちが探しているものと、オレたちが1年かけて獲得している美味しいものとがどうやら同じだとわかってきた。でも生まれて何日目の鴨が望ましいのかとか、なんていうのは、料理によって違うわけだから、オレも料理人が何を欲しているのかをもっと勉強しなきゃいけないと思っているねん。

牧:野生のものだけに、決まった数を安定的に供給するのはむずかしいでしょうね。

藤原:そうやね。5〜10店も付き合えば、オレら猟師は充分生きていけるんや。だから、いくつかの店に特上のものや珍しいものをどうぞと言える関係をつくって継続していくことが大事やと思う。シェフも要らない時はちゃんと断れるようにするのが、長く付き合いを続けるコツじゃないかな。吉岡君が納得する食材提供のパターンをつくれたら、それはそのまま他のシェフにも通用するんじゃないか、と期待しています。

野人力=蓄積した暗黙知

牧:野生のごちそうを一番おいしい時にゲットできるかどうかが、野人として生きていけるかの分かれ目ですね。

藤原:特に舞茸はバッチリのタイミングに出会えるかどうかやね。今年は8月に長雨が降って、それ以降は降らなかったし、きれいな舞茸が育ってるはずと
思ったら、やっぱり当たっていて豊作やったわ。
予想が外れることもあるし。毎年が勉強やね。

牧:そういう仮説を立てる力も野人力ですよね。その元となる考え方って、先人から学ぶよりも自分の経験によるものなのですか。

藤原:もちろん教えてもらうこともあるけど、自分の経験がほとんどやな。予測して仮説を立てるとこからはじまって、実践して確認して、の繰り返しで確率が上がってくるものやから。ただ、嗅覚やアンテナの鋭さ、センスなんかは生まれついての能力差もあると思う。たとえば、オレは鉄砲の腕はまだまだ。他にもっとうまい人もいるしな。でも獣と出会う能力は相当高いと思うねん。たとえば鹿を追うならまず自分が鹿の立場になってみるわけ。灼熱の夏場に尾根の暑っついとこで昼寝したいかって考えたら、絶対したくないやん。獣の思考レベルに自分の脳みそを合わせて、そいつの脳みその状態だったらどう動くのかを考える。オレはそういう予測がだいたい当たるわけや。

牧:獣の気持ちになるということですね。相手を観察しながら仮説検証していくという能力は、野人に関わらず必要ですよね。例えばマーケッターだっていかに消費者の心理になってお客さんの行動をつかむかですもんね。

藤原:昔でいったらヤマ勘ってやつやね。勘って勝手に出てくるもんではなくて、蓄積した暗黙知や経験則があって、はじめて当たるもの。要はひとつの体験からどれだけ学習できるかが肝やな。それなのに、若者は農業やるのでもマニュアルを求めるんや。たとえば除草剤ひとつとっても使用方法には「定植後、5日〜25日」って書いてある。それをセンスのない人は「5日〜25日のあいだに撒けばいいんやな」と思ってしまうわけ。これ、全然ちゃうしね。草の気持ちになって毎日観察していると「今日こそ出たんねん!」という日が必ずある。撒くのはその日だけ。一日後でも先でもあかんねん。ドンピシャの日に撒けば、少ない農薬でしっかり利く。けど、センスのないヤツは「撒いたけど利かへんかったわ」って何度も撒くことになるわけ。そんで、なんであかんかったのかは真剣には考えていない。

移住者のための野人《入門編》やりますよ

牧:経験年数って実はあまり関係なかったりもするんでしょうね。初めての山でも仮説検証をしっかりとして、実践を積めば、意外と1年で何十年もやっている人を越してしまったりもする。本当の野人力ってそういうことだという気がします。身体能力よりも考える力や感じ取る感性が優秀な野人には必要であると。

藤原:でも、そういう考え方を伝えることはできるからね。自分だけでは気づけないことを講習会なんかで教えてあげることはできるはず。移住者のための家をつくりました。畑をつくりました。という場所をつくっただけでは人は育たないから、実践的な内容をしっかり学べるカリキュラムを用意して、それから定住者を迎えなくちゃいけないと思う。そうすれば最低限、基本的な野人入門は果たせると思う。最初から多才じゃなくても、それぞれの個性を活かして、試行錯誤しながら自分らしさを見出していけばいいんじゃないかな。

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