野生復帰的移住



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狩猟女子っていうより、もはや狩猟ママ

鹿取悦子さん 元研究者・東京都渋谷区出身 芦生自然学校 理事、江和ランド勤務

ナウシカ世代の仲間たちと、芦生の研究林に足繁く通った

鹿取悦子(かとり・えつこ)さん。京都大学農学部林学科で森林経理を学んだ鹿取さん。「ナウシカ世代」の仲間たちと芦生の研究林に足繁く通い、森林保護や野生動物の研究を行う傍ら、ダム計画反対運動にも大きく関わるなど、美山にどっぷりの学生時代を過ごす。その後、島根大学で助手を務めるも、2001年より美山での生活をスタート。現在は江和ランドのスタッフとしてアウトドアガイドや農業に従事する。移住者の先駆けであり数少ない女性猟師でもある、美山の頼れる姉御。

– どうして美山に戻ってきたんですか。
島根大学で山村経済学の助手をしていたんだけど、学生に環境問題や食料問題について話しているうちに「こりゃ大学で教えるよりも、自分で田んぼ・畑を作らないと」なんて思いだして。農業と猟と鮎取りしながら生きたいと思って、もう仕事も辞めて定住しようと思って美山に戻ったの。それまでは林業のことしかやってこなかったから、農業は美山に戻ってからイチから学びました。「おまえこんなとこ何し戻ってきてん」、「大学までいって何してんねん」なんて村の人らに言われながら(笑)。

大学の仲間で研究者になった人は結構多いんだけど、私だけちょっと浮いていて。昔から私はアカデミックな研究より山で遊んでいる方が楽しかったんだよね。2001年4月に美山に戻って、翌年に大学の後輩と結婚。彼も仕方なく美山に移り住んで。今は神戸の大学に勤めているから週末婚です。娘育てながら農業に猟に忙しいったら。


早朝に鉄砲かついで水辺にいって鴨撃ってから、大学に行く

– 猟をはじめたのはいつから?
狩猟免許は島根にいる時に取りました。20代後半かな。島根の山奥でじっちゃんばっちゃんしか住んでないところで、みんな獣害対策のトタンを張り巡らせたなかに住んでいるのをみた時「こりゃ人間が負けとる」と思って取ったの。そのあたりにも猟師はいたけど、みんな高齢化していたからね。その時は松江にいたから鴨撃ちをしていた。鴨は日の出とともに撃っていいことになっているから、早朝に鉄砲かついで水辺にいって鴨撃ってから、大学に行くみたいな(笑)。野趣溢れる楽しい島根生活。当時なんて、今よりも女性の猟師が珍しいから、おっちゃんらが寄ってくる寄ってくる(笑)。でも久しぶりに美山に戻ってきて人が過疎化しているのは想定していたけど、ここまで鹿が増えていたとは予想外だったね。

– 美山の猟師も減っているんですか?
私がきた当初は45人くらいはいたよ。怖い人ばっかりだけど(笑)。いまや半分だからね。どんどん辞めちゃったり、亡くなったり。寂しいね。鉄砲は年齢の規制がないからさ。でもベテランの技術も引き継いでいかないともったいないよね。猟は先輩の経験から教えてもらうことがすごく大事。こういう場所では絶対撃ってはいけないとか。美山はそれでもまだ猟師が多い方じゃないかと思うけど、やっぱり若い猟師を育てていかないといけないよね。

– 女性の猟師でも活躍できますか。
ちょっと前までは完全に男社会だったけど、今は人手不足だし、女性でも一人前に扱ってもらえるようになったんじゃないかな。しかも昔は酒飲んでケンカしてるような荒くれ者ばっかりだったけど、いまは時代とともに品行方正になって紳士的な方が増えてきてると思いますよ。そういう意味でも女性も参加しやすくなってきているよね。男女の適正というと、方角の勘というか地図が読める能力みたいなのはいるよね。女性は苦手とされているけど。猟って山の中でポイントポイントで何人も〈待ち〉の人がいて、そこに獣が来たら撃つんだけど、位置関係はゲームの状況によってどんどん変わるから、今どこに〈待ち〉がいるのか、仲間がどっち向いて進んでいるかわからないと危険だよね。もちろんトランシーバーで連絡は取り合うけど、みんな谷の名前や山の名前で指示を出すから、それがわからないと危ない。

– どうやって山を覚えるんですか?
ひたすら歩く。それしかない。「山を登ったら決して引き返すな」とよく言われるんだよね。そのまま突き抜けろと。ここを抜けるとどこに出る、っていうのをたくさん覚えないといけないから。能力はそれを引き出す暮らしをしているうちに出てくるよ。去年、私は雪があるとこに降りてったらザッと滑って、切り株にガンと当たって尾てい骨が折れたけど(笑)。
– 女性猟師の場合、子育て中のブランクも問題ですよね。
それもネックだよね。やっぱり定期的に猟にいかないと“猟勘”が鈍るから。私も妊娠出産の間で2〜3年はほとんどできなかったし。2人目、3人目が生まれると続けるのは大変かもしれないね。私ももはや狩猟女子じゃないし。むしろ、狩猟ママ(笑)。狩猟ママはとにかく時間がないわけ。鹿撃って解体までしなきゃいけないとなるとかなりの時間がかかるからね。合間に5歳の娘の子育てして。剝いた肉のこと忘れちゃってて、急いで真空パックしたり(笑)。毎日ヘロヘロです。


食卓にうまいもん出しとけば、ダンナは何も言いません(笑)

– ダンナさんは猟については何と?
食卓にうまいもん出しとけば、ダンナは何も言いません(笑)っていうか言わせない(笑)。

– 猟は楽しいですか?
うーん、そういう問いを自分にしたことがない。何に惹かれるのかなあ。でも鉄砲も変えたし、当たるようになったぞー!みたいな喜びとか(笑)。去年犬を4匹いれてずっと訓練してたから、今年そいつらと行くのが楽しみだね。

– 江和ランドが中心となって進めている「知井地区鹿有効利用プロジェクト」について教えて下さい。
猟師は今まで猪や熊をメインにしていて、鹿を獲りはじめた歴史が浅いんだよね。今まで鹿は獲れてもほとんど捨てられていたの。一日で多い時は20頭とか獲れるんで、それをもっと有効活用した方がいいんじゃないか、ということで2008年に地域の人たちやNPOと連携してはじまったプロジェクトです。獣肉は獲ってすぐに血抜きをしてきれいに解体することで食材として売れるようになるのね。それで江和ランドの中に鹿肉解体施設をつくって、解体技術の向上や料理法の学習会なんかをはじめて。それができてから、鹿への猟師さんの意識は変わったよね。鹿が増えると猪が減って、いままで猪を専門にしてた猟師が鹿をとるようになってるから。美山には少ないけどまだ専業猟師さんがいて、年間200頭くらいは獲っているんじゃないかな。有害(※ 有害鳥獣捕獲:駆除期間に指定の獣を捕獲すると報奨金が出る)は南丹市は鹿1頭2万円だけど、肉を売れば別途収入になるしね。

– 鹿って増え続けているんですか?
鹿の頭数はピークを過ぎたけど山にもうエサがなくてみんな里に出てくるから、ちょっとくらい猟師が鹿を捕ったところで害は減らないね。残った鹿が食べ続けるから植生も回復する暇がないし。かと思えば、鹿が減ったら今度は猪や熊が増えてくるし。自然の動きをその時その時で的確に捉えて対処しないと、同じようなことが延々と繰り返されてしまう。もうかなり生態系が狂ってきているんじゃないですかね。本当はリアルタイムで動物の状況を把握して管理するというのが必要なんだけど、役場の人は3年くらいで担当が変わってしまうし、経験が蓄積しないからだいたいいつも後手になっちゃう。毎年山の状況は変わるし、動物は移動するし、簡単に解決策が出せるもんでもないんだよね。だから、猟師は1つの里に1人はいないと困るよね。だから狩猟女子、歓迎ですよ。ベテランの猟師が残っているうちに習ってほしいね。

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